おすすめ皮膚科教科書シリーズが⑩まで行ったのでまとめ。
皮膚科診療に役立つと思われる参考書を分野別に10冊、難易度をつけて紹介する。
難易度
★他科志望の研修医
★★皮膚科志望の研修医、皮膚科医
★★★皮膚科専門医
目次
皮膚科の教科書についての雑感
最近不明熱の教科書を読んだらこういうことが書かれていた。
近年の医学書は過度にマニュアル化されて、医療現場の文脈を身視して箇条書きの文が無機質に並べられているものが目立つ。
本書はきわめて叙述的に書かれている。現場でいかに思考し、行動していくか。本書はそのための指針たるべく努力したつもりである。
皮膚科の教科書もこの傾向が強いと思う。
特に臨床写真が重視されるので、文章は無機質な羅列になりがち。
写真はきれいだけど内容はショボイという本も多く、読み物として面白い教科書は少ない。
そんな中からなるべく叙述的で、役に立った本を選んだつもり。
1.アトラス(図版)
見た目で診断する皮膚科ではアトラスが必須。分野別のアトラスもたくさんあるが、まずは基本的な1冊をおさえたい。
①皮膚病アトラス★★
難易度★★(皮膚科志望の研修医、皮膚科医向け)
一番使われているのが皮膚病アトラス。皮膚科診断力を上げるためには、この本を使い込む必要がある。持っているだけでは役に立たない玄人向けの教科書でもある。
2.病理
皮膚科の一番の特徴は病理を自分で診断すること。皮膚病理は特殊な用語も多いのでとっつきにくくて苦手な人も多い。
わかりやすい本を1冊読むとだいぶ違う。
②皮膚病理イラストレイテッド①炎症性疾患★★
難易度★★(皮膚科志望の研修医、皮膚科医向け)
病理のわかりやすい解説本。病理写真を載せて解説している教科書が多い中、イラストで所見が解説してあってわかりやすい。皮膚病理がイマイチ分かっていない人は是非読んでほしい。
3.薬(1):外用薬
外用薬は皮膚科治療の主体。種類と使い方をマスターする必要がある。
湿疹などの「炎症性疾患」と外傷・熱傷などの「創傷」に分けて、外用薬の使い方についての本を紹介する。
③ここがツボ!患者に伝える皮膚外用剤の使い方★
難易度★(他科志望の研修医向け)
主にステロイド外用について。薬剤師向けの本だが、研修医などの初心者におすすめ。実際の処方例が30例解説されていてイメージしやすい。
④褥瘡外用療法のキホン★★
難易度★★(皮膚科志望の研修医、皮膚科医向け)
創傷治療の外用薬について。褥瘡治療薬の使い方についてしっかり勉強すれば、その他の創傷治療にも応用できる。結構マニアックなところまで記載があるので、マニアも満足するはず。
4.薬(2):内服ステロイド
皮膚科では天疱瘡や薬疹、重症の湿疹などでも内服ステロイドを使う場面が多い。使い方や副作用対策をマスターしておく必要がある。
⑤膠原病診療ノート★
難易度★(他科志望の研修医向け)
膠原病の教科書では一番有名な「膠原病診療ノート」。皮膚科では天疱瘡などの治療で内服ステロイドをよく使う。膠原病を診ることはなくても、ステロイドの使い方の章は一読する価値あり。
尊敬するmedtoolz先生もこの本を薦めている。
@Hide_a 「膠原病診療ノート」は、今の時代にあって、「私はこう思う。こうしている」をはっきり書いてあって、あれはすごい勇気であり、矜持だと思うのです。。
— medtoolz (@medtoolz) March 4, 2010
5.治療全般
基礎をマスターしても外来診療はできるようにならない。治療の実践的な教科書を読む必要がある。
特に診療上の注意やピットフォールを解説している本が役に立つ。
⑥診療所でみる皮膚疾患★
難易度★(他科志望の研修医向け)
皮膚科治療の教科書の中で、一番初心者向けでわかりやすいと思う。無機質な教科書ではなく、叙述的に書かれている点がポイント。
⑦皮膚のトラブル解決法★★
難易度★★(皮膚科志望の研修医、皮膚科医向け)
「診療所でみる皮膚疾患」と同じ中村健一先生の本。「診療所でみる皮膚疾患」の中から、患者への説明のコツや陥りやすいミスにポイントをしぼって書かれたコンパクトな本。読み物として面白く、かなりオススメ。
6.疾患別治療
頻度の高い疾患に関しては、各疾患に特化した教科書を読むとよい。「水虫」と「イボ」についての教科書を紹介した。
⑧毎日診ている皮膚真菌症★
難易度★(他科志望の研修医向け)
白癬診療の教科書の決定版の教科書。学生や研修医の指導にも使える。白癬と湿疹を鑑別できれば皮膚科の50%をカバーできる。
⑨疣贅のみかた治療のしかた★★
難易度★★(皮膚科志望の研修医、皮膚科医向け)
イボ患者は結構多いが決定的な治療法がないので、いろいろな治療法をためすしかない。
20種類以上の治療法が300ページ以上にわたり詳細に解説されているので役に立つ。
7.診断学
趣向の違う本を1冊。皮膚科は直感的診断に偏りがちなので、診断に至るまでの「思考過程」を勉強しておくと幅が出ると思う。
⑩誰も教えてくれなかった診断学★~★★★
難易度★~★★★(全科の医師)
診断の思考過程を体系的に解説した本で、初めて読んだときは衝撃を受けた。どんな科でも役に立つと思うので是非読んでほしい。
9.おまけ(国家試験対策)
国試の時は予備校の講義テキストだけしかやらなかった。
「100問ノススメ皮膚科」も買ったが使わなかった。
あまり出題されない皮膚科を勉強するより、内科をしっかり勉強したほうが将来的に役に立つのは間違いない。内科のベースの知識がないひとは皮膚科医としても底が浅いように感じる。
オススメ教科書のまとめ
皮膚科教科書のおすすめを、キリがいいので10冊を紹介した。
他にもいくつかオススメ教科書があるので、今後も少しずつ紹介していく予定。
今の悩みは「ダーモスコピー」と「手術」の教科書にこれっていうものがないこと。
いろいろ探していきたい。