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皮膚科医が教える外用療法のコツと落とし穴

 

皮膚科の独自の治療法として外用療法がある。

軟膏を処方するだけだと思われがちだが、これが意外と難しい。

今回はこれまで書いた外用療法に関する記事をまとめて紹介する。

(随時更新)

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1. 外用薬の使用率

 

外用薬を処方する上で必ず知っておくべきなのが、実際は塗っていない患者がとても多いということ。

>>皮膚科患者の薬の使用率は実際どれくらい?【アドヒアランス】

重症の手湿疹患者の薬剤使用率(内服外用併用)

・内服⇒96%(3週間後)

・外用⇒64%(3週間後)

(J Am Acad Dermatol. 2006; 54(Suppl) : S235-6.)

 

それがドクターショッピングの一因にもなっている。

「他の皮膚科に行ったけど治りません」といって転院してくる患者は非常に多いが、その中にきちんと軟膏を塗っていない人が一定数いるようだ。

>>ドクターショッピングを避ける工夫②軟膏編

 

処方するだけで終わらせないことが、皮膚科診療で大事なことである。

 

2. アドヒアランスを上げる工夫

 

外用薬の使用率(アドヒアランス)を上げるために一番大切なのは、外用指導である。

外用指導の具体的な方法を考えてみた。

 

外用指導の工夫

  1. 正しい塗り方、量、期間
  2. モチベーションを上げる
  3. 納得してもらう

 

>>皮膚科医の外用指導Tips | 知っておきたい8つのコツ

>>「お手軽、軟膏ローテーション療法」 外用のモチベーションを上げる方法

 

これらの工夫がうまくいき使用率を高めることができれば、治癒率が上がり名医になれるということでもある。

 

他にも研修医が出すリンデロンはしっかり塗られないが、教授が出すリンデロンだったら一生懸命塗ってもらえるということがありうる。

そういう心理面についても考慮する必要がある。

 

精神科医・春日武彦先生が著書の中で「精神科における名医」について書かれていて、これは皮膚科にも応用できそうだ。

>>皮膚科の名医になるための3つの条件【理想の医師像】

名医の条件

  1. オーラの名医
  2. データの名医
  3. こだわりの名医

 

3. 外用薬各論

①ステロイド外用薬

 

ステロイド外用薬はweakからstrongestまでの5ランクに分けられている。

しかし細かい強さの順序については教科書にはあまり書いていない。

そこで文献から外用薬の詳しい順位表を作成した。

ステロイド外用薬比較表

>>ステロイド外用薬の詳しいランク表を作成した【強さ&副作用】

 

②保湿剤

 

皮膚科の治療でとても大事になるのが保湿剤である。

 

まず保湿剤にどのような効果があるのかを知る必要がある。

保湿剤の効果が証明されているのは3点。

保湿剤の効果

  1. 皮膚症状の再燃抑制効果
  2. ステロイド使用量の減量効果
  3. ステロイドの効果アップ

>>保湿剤の有効性とエビデンスをまとめる【ヒルドイドバッシングより】

 

そして保湿剤とステロイドを併用するときに必ず問題になるのが、どちらを先に塗るかということ。

現在3つの意見が対立している。

保湿剤とステロイドを塗る順番

  1. 保湿剤→ステロイド
  2. ステロイド→保湿剤
  3. どちらでもよい

 

個人的には保湿剤を縫ってからステロイドを塗るように指導している。

>>【激論!】保湿剤を先に塗るかステロイドを先に塗るか問題

 

また最近はヒルドイドソフトの処方が制限される可能性が出てきた。代替となる市販の保湿剤についてまとめてみた。

セラミド配合保湿剤の表

>>【永久保存版】市販の保湿剤のリストを作成した!

 

③タクロリムス

 

皮膚科の治療はほとんどがステロイド外用である。

そしてステロイドがあまり効かなかったときは、すぐに手詰まりになってしまうという脆さがある。

 

そんなとき皮膚科医の強力な武器になるのがタクロリムス軟膏(プロトピック軟膏)。

そこでプロトピックについて「アトピー性皮膚炎ガイドライン」を中心にまとめてみた。

概要

  • 強さはリンデロンVと同等
  • 初期の副作用はステロイドより多い
  • 長期使用の副作用はステロイドより少ない
  • 初期治療はステロイド、維持治療はプロトピックが望ましい
  • アトピー以外の病変にも効果がある

>>皮膚科医の切り札「プロトピック軟膏」を斬る!

 

④抗菌薬

 

軽症の膿痂疹であれば外用抗菌薬で治療が可能。その使い分けについて、海外のガイドラインから解説した。

ゲンタシンの感受性がとても低いことに注目。

 

抗菌薬感受性

MSSAMRSA
ゲンタマイシン36.5%9.2%
クリンダマイシン98%64.5%
フシジン酸99.5%98.7%
ナジフロキサシン100%100%
ムピロシン99.5%98.7%

>>膿痂疹・皮下膿瘍の治療法【皮膚科医の抗菌薬の使い方④】

 

⑤抗真菌薬

 

水虫患者の半数は薬局で市販薬(OTC医薬品)を購入しているという。水虫はOTCでも治療が可能だが、「かぶれ」を起こしやすいので注意が必要である。

 

しかし厚労省はOTCを推進している。

韓国ではすでに湿疹、水虫、にきびの薬がOTCにスイッチしているという。

日本でも医療費の抑制のため、OTCへの切り替えが密かに進んでいて、2017年1月からセルフメディケーション税制が新設された。

>>市販の水虫薬はやめよう OTCに侵食される皮膚科の未来

 

⑥育毛剤

 

男ならみんなが気になる薄毛の話。

薄毛に対して一番効果が高いのはプロペシア、ザガーロなどの内服薬である。

しかし内服に抵抗がある人には外用育毛剤がすすめられる。

日本皮膚科学会の「男性型脱毛症(AGA)ガイドライン」から市販の育毛剤をまとめてみた。

育毛剤のコスパの図

>>育毛剤の効果とコスパをAGAガイドラインから考える【男性型脱毛症】

 

4. 軟膏の混合の問題点

 

皮膚科医の85%が軟膏を混合して処方しているらしい。

外用薬を混合することは使用率を上げる方法の一つである。

しかし混合にはいくつかの注意点があるので、それらを知っておく必要がある。

 

外用薬混合の注意点

  • 外用薬を希釈しても副作用は減らない
  • クリームは混合しないほうがよい(W/O型以外)
  • 液滴分散型の軟膏は混合できない

>>「外用薬混合の可否」を皮膚科医が解説する【メリット・デメリット】

 

5. ジェネリック外用薬の問題点

 

医療費抑制のため、厚労省は後発医薬品の使用を促進している。

皮膚科の武器である外用薬もその対象である。

しかしジェネリックの外用薬にはいくつかの問題点があることも指摘されている。

 

  1. 効果が低いかもしれない
  2. かぶれるかもしれない
  3. 名前が長すぎる

 

これらの問題点からジェネリック外用薬について考えてみた。

>>ジェネリック外用薬の3つの問題点

 

6. 次世代の治療法 外用薬が不要になる?

 

皮膚科は慢性疾患が多く、継続した外用療法が必要である。

 

しかし最近様相が変わってきている。

リウマチなどで使用されていた生物学的製剤という注射薬が、皮膚疾患にも効果があり、しかも劇的に効くことが分かってきたのである。

だが一番の問題は値段で、月に2万円程度の治療費が必要になる。

>>道端アンジェリカと乾癬とお金の話

 

「治らない皮膚科」のイメージが一新するかもしれないが、「お金があれば治る」という時代になるだろう。

今後は丁寧な外用指導よりも、高額薬剤で一気に治すというのが主流に変わっていくのかもしれない。

 

7. おすすめ教科書

 

外用加療を学ぶ上で参考になる教科書を紹介する。

>>ここがツボ!患者に伝える皮膚外用剤の使い方【皮膚科医のオススメ教科書⑤】

>>褥瘡外用療法のキホン【皮膚科医のオススメ教科書⑥】

 

▼オススメ教科書①~⑩のまとめはこちら▼

厳選!皮膚科のおすすめ教科書15選【コメディカル、学生、研修医から専門医まで】
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