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初心者のための皮疹のみかた-応用編②

 

前回の記事のつづき。

(まず最初に基礎編の記事を読んでください>>初心者のための皮疹の見かた「基礎編」

 

今回は真皮の病変について。

初心者向けに簡略化したものなので、上級者が読むと違った意見があるかと思いますがご容赦ください。

 

紅斑の表面がツルツルしている。

これは皮膚の外側(表皮)には病変がなく、内側(真皮)に病変があるということである。

 

この症状をみたときは薬疹を考える。

原因が「体の中」から来た場合は、皮膚の内側(真皮)から変化が起こる(薬疹など)。

 

しかし薬疹の診断のためには鑑別すべき疾患がある。

 

  • 薬疹
  • 感染症
  • 膠原病

 

「真皮の変化を伴う紅斑」の診療アルゴリズムについて解説する。

 

鑑別すべき疾患

 

「原因が体の中からくるもの」は多岐にわたる。

まず代表的なものは薬剤。

他に麻疹や風疹など、皮疹をつくる全身性の感染症。

さらに成人スティル病などの膠原病。

 

  • 薬剤
  • 感染症(麻疹、風疹、伝染性単核球症、パルボ、ツツガムシ病、梅毒などなど)
  • 膠原病(成人スティル病、皮膚筋炎、類天疱瘡など)

 

真皮に病変をつくった場合、ほぼ同じ見た目になる。

これらを肉眼的に鑑別するのは難しい(ほぼ無理)。

薬疹の鑑別

(MB derma 162 p70 2010)

 

皮膚生検を行っても真皮の炎症所見が得られるだけで、鑑別にはならない。

つまり原因が何であれ、皮膚が表現できる皮疹のパターンは限られているということだ。

そのため血液検査などで、あらゆる原因を網羅的に鑑別していく必要がある。

 

いろいろな原因

 

その他、原因の一部を紹介する。

感染症ではウイルス以外にツツガムシ病や日本紅斑熱などのリケッチア症。

(刺し口が特徴とされるが、見つからないこともある)

 

梅毒のバラ疹も真皮の病変。

 

膠原病では成人スティル病

 

さらに水疱性類天疱瘡も初期は真皮のパターンをとる。

 

中毒疹という病名

 

この真皮のパターンをみる上で便利な病名がある。

「中毒疹」だ。

反応性の皮疹をすべてまとめたゴミ箱診断である。

中毒疹とは

体外性あるいは体内性物質により誘発される反応性の皮疹の総称。

薬疹のほか、ウイルス、細菌、食物、その他の原因による急性発疹症のゴミ箱診断とも呼ぶべき概念。

「あたらしい皮膚科学」より

 

「中毒疹という病名はゴミ箱診断だから使うな」という先生もいるが、とりあえず中毒疹であると認識してから、原因を鑑別していくのが現実的な対応である。

(結局原因がわからず、中毒疹で終わってしまう症例が多いことも現実だが)

 

 

しかしあらゆる疾患を鑑別していくのは難しい。

そこで状況証拠から考えていく。

 

どうやって診断するのか

 

例えば「肺炎で抗菌薬加療中の入院患者に皮疹が出た」場合。

麻疹であったり、成人スティル病であったりする確率は低いだろう。

抗菌薬の薬疹として対応する。

日常診療ではこのパターンが一番多い。

 

一方「1か月前からの不明熱と皮疹」の場合。

薬疹であったり、急性感染症であったりする可能性は低いだろう。

成人スティル病などの膠原病を考えて検査を進めていく。

 

「薬疹でしょうか?」と皮膚科医に聞いても、「薬疹の可能性は否定できません」という回答ばかりで不満を持つ方も多いだろう。

しかし見た目で分かることには限界がある。

「薬疹ですか?」と聞かれて「薬疹です」と断言できないのはこういうわけである。

 

蕁麻疹を鑑別する

 

ただし中毒疹を考える前に鑑別しておく必要があるのは蕁麻疹である。

蕁麻疹も真皮の病変なので、表面はツルツルしている。

MSDマニュアル

 

中毒疹とは形態が若干異なるが、見た目ではわかりにくいこともある。

鑑別のポイントは「皮疹が出たり消えたりするか」。

蕁麻疹は出没するが、中毒疹は消えない。

 

 

これらを混同している人もいるが、まったく違う疾患だ。

蕁麻疹はマスト細胞、中毒疹は主にリンパ球が原因になるので病態が異なっている。

 

  • 蕁麻疹→マスト細胞
  • 中毒疹→リンパ球

 

まず蕁麻疹を除外した上で中毒疹の鑑別を進めていく。

 

まとめ

 

このように「表面の性状」と「病変の深さ」という軸で皮疹をみていくと、皮膚科診察が少しクリアカットになるのではないか。

 

個人的に皮膚科診断はあまり体系化されてないように感じている。

一方内科には診断推論というものがあって、初めて知ったときは衝撃を受けた。

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今回はあまり皮膚科になじみのない教科書を紹介する。 最初に「誰も教えてくれなかった診断学」を読んだときは衝撃を受けた。 診断学には興味があって色々な本を読んだが、症状別に鑑別診断が列挙してあるだけのものが...

 

主訴から鑑別診断リストをつくって、診察や検査の感度・特異度から診断を絞っていく。

内科診断ってこんなに体系化できるのか、と。

 

それでは皮膚科の診断推論を作るにはどうしたらいいか。

見た目でどこまでわかるのか、わからなかったらどんな疾患を考えるのか。

それらを鑑別する検査は何なのか。

このあたりを体系化する必要があるだろう。

 

まず「見た目では分からないこと」を明確にすることがこのシリーズのテーマでもある。

自分なりに考える皮膚科の診断推論について、いずれまとめていきたいと思っている。

 

紅斑以外の皮疹のみかたはこちら

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