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皮膚科の名医になるための3つの条件

 

医師になったからには名医を目指したいと誰もが思うはずである。

しかし、難しい病気をひと目で診断できる皮膚科医が名医というわけでもない。

診断は難しくても治療は大差がないからだ。

そのため皮膚科で「名医の判断基準」を決めることは難しい。

 

かといって誰が診ても同じで、名医が存在しないというわけでもない。

皮膚科患者はきちんと薬を使っている人が少ない。

【関連】皮膚科患者の薬の使用率は実際どれくらい?

 

つまり患者にしっかりと外用させることができれば他の医師より治癒率が上がり、「名医」になれると考えられる。

そのために役立ちそうなものは何かを考えると

 

  • 肩書
  • データを使う
  • 秘伝の処方

 

などが挙げられるのではないかと思う。

今回は皮膚科の名医について。

 

教授の薬は効きやすい?

 

高齢ドクターの診察室から

高齢ドクター(80歳くらい)のクリニックへバイトに行ったとき、なんでもない軟膏1本を患者がとてもありがたがっている姿を目にした。

御利益がある気がするのだろう。

その患者はおそらく一生懸命軟膏を塗るので、そのぶん治癒率は高いと思われる。

となると、このドクターは間違いなく名医である。

 

精神科医、春日武彦先生(春日先生について>>治療法がない病気をどうみるか)の本を読んでいると、同じような話があった。

 

名誉教授の処方

春日先生が名誉教授の診察をみたときの話。

いつも同じ薬しか出さないが、治癒率は高かったという。

大学病院にいた頃、名誉教授の特別外来みたいなものがあり、彼がいつも同じ特定の薬しか出さないことに気がついた。

同じ特定の薬を、ただし自信たっぷりな態度で処方する。

そしてたぶんその自信に満ちた態度と教授というステータスが作用するのであろう。誰もがしっかりと改善するのであった。

 

春日先生も同様の薬を使ってみたが、名誉教授ほどの有効率は得られなかったそうだ。

同じ処方でも医者によって効果が変わるという話である。

 

これは皮膚科でも当てはまることだ。

教授が出すリンデロンだったら一生懸命塗るけど、研修医が出すリンデロンはしっかり塗ってくれないということがありうる。

 

精神科の名誉教授のように、ステータスで外用薬の有効率を高めることができるはずだ。

また高齢ドクターもその風格で同様の効果を得ることができるだろう。

 

名医になるための方法

 

でも自分は教授ではない。

一般人はどうすればよいのか。これも同書の中にヒントがある。

精神科の名医がいたとして、彼らの処方箋がいかなるものかを考えてみたい。

 

春日先生が精神科における名医について書いていて、皮膚科にも応用できそうだ。

  1. オーラの名医
  2. データの名医
  3. こだわりの名医

 

名医A オーラの名医

ステータスやカリスマ性で患者からの人気を集める名医がいる。

診断や処方が平凡でも、患者が信用するぶん治癒率は高い。

名医Aにとっては処方箋はさして意味がない。ひとつの疾患に対して処方の種類は2、3種類しかない。だが面接技術やある種のオーラにおいて突出していて、2種類だけでも患者を満足させられるのだろう。

 

上記の名誉教授や長老医師がこれに当たる。

出世して肩書を得ていけば自然と名医に近づくことができるはずだ。

 

また病院の大きさもステータスのひとつとなる。

大きな病院を好む患者は多い。

【関連】良い紹介と悪い紹介から、紹介状の書き方を考える

総合病院に勤務することでステータスが得られ、名医に近づくことができる。

 

場の力を借りることは戦略としては「あり」。

でも開業するとゼロになってしまうので、病院の実力を自分の実力と勘違いしてはいけない。

案外、自分は患者に信頼されていると思っていても、患者が信頼しているのは病院のネームバリューだった、ということも多い気がする。

 

名医B データの名医

よくわかっていなくても、難しい説明を好む患者がいる。

名医Bは、最新の薬剤を使ったり、データを患者に提示して説明することを好む。彼は権威付けをされている方策を選択したがる。すると迷いが生じない。力みなぎる頼もしい医師像が出現することになる。

 

患者によっては、あえて細かいデータや論文を示してみることも役に立つ。

新薬を使ったり、薬の細かいウンチクを患者に披露するというのも効果がありそうだ。

 

自分自身ではなく、治療の方を権威付けする。

それが外用のモチベーションを上げるきっかけになる。

「何かすごそうだ」と患者に思わせる演出力も名医の条件と言えるだろう。

 

名医C こだわりの名医

精神科医の中には秘伝のレシピのような細かい処方をする人がいるそうだ。

細かい処方で患者からの信頼を得る。

たとえその処方にエビデンスがなかったとしても、患者に安心感を与えられれば治癒率は上がるだろう。

名医Cは、名人芸的処方に精魂を傾ける。服用についても細かい指示をする。

患者のほうは飲む時刻も結構いいかげんで、時には飲み忘れたりで、あまり意味がなさそうに思われる。

しかし現実離れした処方であっても、そのような情熱で処方がなされれば、患者側としても安心感を覚えられるのではないか。

 

オリジナルの混合軟膏もこの名人芸的処方に当たる。

【関連】皮膚科医が「外用薬混合の可否」について解説する

 

EBM上では意味がない怪しい混合でも、そのこだわりや熱意が患者に伝われば効果はでるはずだ。

「特別に調合された薬だから効くに違いない」と思わせることができれば、外用のモチベーションが上がり治癒率が高まるだろう。

 

セファランチンとかグリチロンとか、効くのか効かないのかよくわからない薬を組み合わせるのも有効かもしれない。

 

一番大事なのは演出力

 

診療技術を磨くだけではなく、純粋な医療の技術の外にも「名医になるためのヒント」が隠されている。

 

  • 肩書
  • データを使う
  • 秘伝の処方

 

これらの方法に対して否定的な感情をもつ人もいるようだ。

「患者に対する誠実さこそが最も大事である」と。

しかし自分では気づいていないだけで、すでに診療の中に組み込まれている可能性もある。

「誠実さ」で信頼されていると勘違いしているだけで、本当は肩書が信頼されているだけだった、となったら目も当てられない。

こういった演出力に対して、我々はもっと自覚的である必要があるだろう。

 

次回はさらに具体的な方法について考えてみたい。

つづく

患者の心をつかむ演出力「診療中でも笑顔が大事」
「医療」という商品の価値には2つの側面がある。 病気を治すという確実な医療の要素 サービスをしてほしいという、サービス業本来の要素 特にクリニックを開業するとなると、サービス業の要素が重要になる...

 

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