膿痂疹・皮下膿瘍の治療法【皮膚科医の抗菌薬の使い方④】

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皮膚科医の抗菌薬の使い方シリーズ第4回。

今回は膿痂疹・皮下膿瘍の治療についてガイドラインを紹介する。

Practice guidelines for the diagnosis and management of skin and soft tissue infections: 2014 update by the infectious diseases society of America.

Clin Infect Dis. 2014 Jul 15;59(2):147-59.

▼前回の記事▼

皮膚MRSAの抗菌薬【皮膚科医の抗菌薬の使い方③】
MRSAと聞くと「バンコマイシン!ザイボックス!キュビシン!」というのが頭に浮かぶ。 しかし皮膚科で関わってくるMRSAは院内...
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伝染性膿痂疹の治療

限局した病変であれば外用抗菌薬で治療可能だが、病変が広範囲になれば内服抗菌薬を使用する。

Impetigo can be treated with oral or topical antimicrobials, but oral therapy is recommended for patients with numerous lesions or in outbreaks affecting several people to help decrease transmission of infection.

Clin Infect Dis. 2014 Jul 15;59(2):147-59.

1. 外用抗菌薬

膿痂疹の原因菌はグラム陽性球菌のレンサ球菌とブドウ球菌。

最近はMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)も増えているという。

MRSAとMSSA(メチシリン感受性黄色ブドウ球菌)に対する抗菌薬の感受性は以下の通り。

抗菌薬感受性

MSSA MRSA
ゲンタマイシン 36.5% 9.2%
クリンダマイシン 98% 64.5%
フシジン酸 99.5% 98.7%
ナジフロキサシン 100% 100%
ムピロシン 99.5% 98.7%

(J Med Microbiol. 2008 Oct;57(Pt 10):1251-8.)

ゲンタシンはMRSAはおろかMSSAに対しても4割くらいしか効かないので使用してはいけない(軟膏基剤なので皮膚の保護効果はあるが)。

フシジン酸(フシジンレオ)、ナジフロキサシン(アクアチム)、ムピロシン(バクトロバン)はMRSAにも効果がある。

海外で推奨されているのはバクトロバンだが、日本では皮膚感染症への保険適応がないため、アクアチムかフシジンレオを使用する。

アクアチムの方が耐性化しにくいそうだ。

NDFXはFA より耐性菌の誘導が少なく,FAよりCA-MRSAに有効である。

MRSA感染症の治療ガイドライン 日本感染症学会

2. 内服抗菌薬

基本的にはレンサ球菌、黄色ブドウ球菌をターゲットに第一世代セフェム(ケフレックス)を使用する。

Oral therapy for ecthyma or impetigo should be a 7-day regimen with an agent active against S. aureus. Because S. aureus isolates from impetigo and ecthyma are usually methicillin susceptible, dicloxacillin or cephalexin is recommended.

Clin Infect Dis. 2014 Jul 15;59(2):147-59.

MRSAが検出された場合は培養結果を参考に、CA-MRSAに抗菌力を持つST合剤、クリンダマイシン、ドキシサイクリン/ミノサイクリンなどを使用する。

When MRSA is suspected or confirmed, doxycycline, clindamycin, or sulfamethoxazole-trimethoprim (SMX-TMP) is recommended.

Clin Infect Dis. 2014 Jul 15;59(2):147-59.

日本とアメリカの違いや小児については前回の記事参照

>>皮膚MRSAの抗菌薬【皮膚科医の抗菌薬の使い方③】

膿痂疹治療の注意

MRSAが検出されても感染を起こしているとは限らない。

定着菌が検出されただけという場合がある。

一般に湿疹などのびらん面では黄色ブドウ球菌をはじめとする種々の細菌が定着しているため,細菌培養を行うとほとんど陽性となる。

ステロイドの外用を行うと,湿疹が良くなり,そこに定着していた細菌は自然に消失する。

逆に湿疹病変に抗菌薬の外用を行うと,細菌が培養されなくなるが,湿疹病変はむしろ悪化する。

MRSA感染症の治療ガイドライン 日本感染症学会

難治性の膿痂疹で紹介された患者がステロイド外用で治ることも結構あるので、抗菌薬にこだわりすぎるのも注意。

皮下膿瘍の治療

皮下膿瘍の治療の基本は切開排膿である。基本的に抗菌薬は不要とされている。

Incision and drainage is the recommended treatment for inflamed epidermoid cysts, carbuncles, abscesses, and large furuncles.

The addition of systemic antibiotics to incision and drainage of cutaneous abscesses does not improve cure rates.

Clin Infect Dis. 2014 Jul 15;59(2):147-59.

全身症状がある場合や免疫不全患者では抗菌薬を投与する。

However, systemic antibiotics should be given to patients with severely impaired host defenses or signs or symptoms of systemic infection.

Clin Infect Dis. 2014 Jul 15;59(2):147-59.

皮下膿瘍の抗菌薬

アメリカでは皮下膿瘍の原因菌の63%がCA-MRSAらしい。

Among 527 patients with a nonperirectal cutaneous abscess who presented in 2008 to U.S. emergency departments that were part of an emerging-infections surveillance network, the abscess was due to community-associated MRSA in 63% of the patients, methicillin-susceptible S. aureus in 15%, beta-hemolytic streptococci in 2%, and other bacteria in the remaining 20%.

N Engl J Med. 2014 Mar 13;370(11):1039-47.

そのため基本的にMRSAを考えて抗菌薬を使用することが推奨されている。

皮下膿瘍の抗菌薬

Moderate infection: patients with purulent infection with SIRS

Severe infection: patients with SIRS and hypotension

(Clin Infect Dis. 2014 Jul 15;59(2):147-59.)

使用するのは中等症ではST合剤、クリンダマイシン、ドキシサイクリン/ミノサイクリン。

重症では抗MRSA薬(バンコマイシン、ザイボックス、キュビシン)。

ただ日本でも同じように全例でMRSAのカバーが必要なのかはわからない。

青木先生の感染症診療マニュアルでは、膿瘍の第一選択は第一世代セフェムになっている。

自分は最初は第一世代セフェムを使用している。

まとめ

伝染性膿痂疹、皮下膿瘍の治療についてまとめた。

CA-MRSAを念頭に置いて診療を行う必要がある。

今回で「皮膚科医の抗菌薬の使い方」シリーズはいったん終了。

バクタの予防投与やマクロライドの抗炎症作用などについても、いずれまとめたいと思っている。

皮膚科医の抗菌薬の使い方シリーズ

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