地雷女という言葉があるそうだ。
「地雷女」という言葉を聞いたことはあるだろうか。一見、無害なふりをして潜んでいながら、ひとたび接し方を間違えると爆発し、周囲の人間に大きなダメージを与える女性の通称である。
今回はそんな地雷女を扱った(?)小説「恋愛中毒」の感想(ネタバレあり)。
ネタバレなしの感想はこちら
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「恋愛中毒」の感想
「恋愛中毒」のあらすじ
あらすじ
夫との離婚の痛手からもう二度と他人を愛しすぎないと誓った水無月。しかし長年ファンであった作家創路と出会い、引かれていく。恋に不器用な女性の物語。
夫との離婚の痛手から、「もう二度と人を愛さない」と誓った主人公の水無月は、弁当屋で働きながら地味な生活を送っていた。
色気のないおばちゃん達に混ざって唐揚げでも売っていたほうが今の私には気は楽だった。
化粧はしないでいいし、ジーンズとエプロンで働ける。
飲み会はないし、男の人との出会いもない。なんて気が楽なんだろう。
しかしもう他人を愛さないと決めた水無月の心に、偶然出会った小説家創路が強引に踏み込んでくる。
押しに弱い水無月は、言われるがまま創路と不倫関係になってしまう。
まさかと思ったけれど、やはり私はやられてしまった。
この期に及んでもまだ実感が湧かなかった。自分の身に起こったことが信じられなかった。
創路は妻がいるにもかかわらず、何人もの愛人を囲っている自由奔放な人物。
「恋愛中毒」は恋に不器用な水無月と創路の妻、他の愛人との関わりが淡々と語られていく小説である。
以下ネタバレあり
「恋愛中毒」のネタバレ
水無月は他の愛人たちをうまく懐柔して、創路の一番になることを画策する。
中盤あたりでは、意外としたたかな人間なんだなという印象になる。
終盤になってくると、さらに雲行きが怪しくなってくる。
水無月は押しに弱く、言われるがままになっていたと思われたが、それは計算された行動だったことがわかる。
一から十まで先生の言うことを聞けるのは私だけだ。
先生の言うことを何でも聞いてきたのは先生を甘やかしたかったからだ。
甘やかして甘やかして、私がいなければ何もできない男に先生をしたかったからだ。
そして衝撃なのは、夫との離婚の原因が「夫の愛人に対するストーカー行為による逮捕」だったということ。
私がしたことは一から十まで犯罪なのだそうだ。逮捕された時に警察の人にそう言われた。とにかく思いつくかぎりのいやがらせをしたことは覚えている。
懲役一年、執行猶予三年というのが私の受けた罰だった。
反省したふりをして、心の奥底では悪いのは私だけだろうかと釈然としない思いでいっぱいだった。
しかもまったく反省していない。
物語の最後では創路の娘を監禁した上に、元夫へのストーカー行為で実刑判決をくらい投獄されてしまう。
その様子も淡々と描かれるので恐怖が増す。
決めたはずのことを私は破った。他人を愛するくらいなら自分自身を愛するように。
かつてそう強く決心したはずだったのに私は同じ過ちを繰り返した。
今度こそ私は本当に実刑をくらった。
私は何も考えたくなかった、反省なんかしたくなかった。
この物語の本当の構図が明らかになった時は衝撃を受けた。
「水無月さん、頭がおかしいんじゃないの?」
「やっと分かったのね」
付き合った女がメンヘラだった、というような驚き。天地がひっくり返るような叙述トリックである。
ミステリーとしても優れた作品だと思う。
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「恋愛中毒」の怖さ
読んでいる途中までは、水無月は「冷静な観察眼を持った地味目の女性」だと思っていたが、実はとんでもないストーカー女だった。
私は荻原に恋をしていたわけではなかった。なのに寝てしまった瞬間、私の中に何かが芽生えた。
それからというもの私は毎日のように彼の家へ電話をし、避けられていることを感じると駅や道端で待ち伏せをした。
いかに冷静でイカレてるかが理解できる(ハンター×ハンターより)。

こういう女性に手を出すことは誠に慎まなければならないが、それに気づけるのかあまり自信はない。
水無月の正体を見抜くことができるか?
地雷女を知る上で避けては通れない(?)小説である。
地雷女がわかる作品たち
▼デヴィッドフィンチャーが描く地雷女▼
▼ジブリの隠れた名作にも地雷女▼