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皮膚MRSAの抗菌薬【皮膚科医の抗菌薬の使い方③】

 

MRSAと聞くと「バンコマイシン!ザイボックス!キュビシン!」というのが頭に浮かぶ。

しかし皮膚科で関わってくるMRSAは院内感染で問題になるものとは異なっている。

今回の「皮膚科医の抗菌薬の使い方」は皮膚のMRSAについて。

 

▼前回の記事▼

蜂窩織炎の治療法【皮膚科医の抗菌薬の使い方②】
今回は「皮膚科医の抗菌薬の使い方」シリーズ第2回。 蜂窩織炎に対する抗菌薬の使い方をガイドラインから紹介する。 前回の記事 ▼フロモックスを使ってはいけない理由▼ 皮膚感染症のガイドライン ...
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MRSAの2つの種類

 

皮膚感染症から分離されるMRSAは、院内で分離されるものと薬剤感受性が異なることが古くから知られていて、最近CA-MRSAという概念が出てきた。

 

MRSAはCA-MRSAとHA-MRSAの2種類に分類される。

MRSAは従来から院内感染型として知られているhospital-associated MRSA (HA-MRSA)と別に、市中感染型としてcommunity-associated MRSA(CA-MRSA)が存在している。

MRSA感染症の治療ガイドライン 日本感染症学会

 

  1. CA-MRSA⇒比較的多くの抗菌薬に感受性あり
  2. HA-MRSA⇒多剤耐性

 

皮膚感染症から分離されるMRSAはほとんどがCA-MRSAだという。

皮膚科で治療される皮膚軟部組織感染症から分離されるMRSAは、入院・外来患者を問わず、ほとんどがCA-MRSAである

MRSA感染症の治療ガイドライン 日本感染症学会

 

そのため皮膚のMRSA感染症では必ずしも抗MRSA薬を使う必要はない。

CA-MRSAに対する推奨抗菌薬をまとめてみる。

 

CA-MRSAの推奨抗菌薬

1. アメリカ

 

アメリカでCA-MRSAに対して推奨されている抗菌薬は3種類。

 

  • ST合剤(バクタ)
  • クリンダマイシン(ダラシン)
  • ドキシサイクリン/ミノサイクリン(ビブラマイシン/ミノマイシン)

CA-MRSAの抗菌薬の表

Empirical antibiotic therapy, if prescribed, should have in vitro activity against community-associated MRSA.

TMP-SMX, clindamycin, and tetracycline have been shown to have in vitro activity against 94% to nearly 100% of more than 300 MRSA isolates tested in a 2008 U.S. emergency department–based surveillance study.

N Engl J Med. 2014 Mar 13;370(11):1039-47.

 

CA-MRSAに対してこれらの3薬剤の感受性は高く、腸管からの吸収率もよい。

 

CA-MRSAに対する抗菌薬感受性(アメリカ)

ST合剤99%
クリンダマイシン94%
ドキシサイクリン98%

(Clin Infect Dis. 2011 Jul 15;53(2):144-9)

 

抗菌薬の腸管吸収率

ST合剤85%
クリンダマイシン90%
ドキシサイクリン100%

(レジデントノート17(2) 287-292, 2015.)

 

皮膚科医にとってはミノマイシンが慣れていて使いやすい。(ビブラマイシンは置いていない病院が多い)

バクタはスティーブンス・ジョンソン症候群の症例を何人か経験していて、個人的には使うのにやや抵抗がある。

ダラシンも使いやすそうではあるが、日本とアメリカでは感受性が異なっているらしい。

 

2. 日本

 

日本のCA-MRSAの特徴は

 

  • ダラシンの感受性がアメリカより低い
  • バクタは皮膚感染症に保険適応がない

 

ということである。

 

CA-MRSAに対する抗菌薬感受性

アメリカ日本
クリンダマイシン94%58%

(日小皮会誌 28(2) 165-168, 2009.)

 

・わが国での皮膚科領域で分離されるMRSAの薬剤感受性を見るとCLDMは米国と比べ抗菌活性が劣ることがある。

 

・皮膚軟部組織感染症の患者でMRSAが分離された場合は、入院外来を問わずCA-MRSAの可能性が高いので、中等症以下であればST合剤、MINOを投与する。

 

・ただしST合剤はわが国では皮膚軟部組織感染症には保険の適用がない。

 

MRSA感染症の治療ガイドライン 日本感染症学会

 

これらから考えると、3薬剤の中ではやはりミノマイシンが使いやすいかもしれない。

 

重症例では抗MRSA薬(バンコマイシン、ザイボックス、キュビシン)を使用する。

重症例、全身症状を伴う皮膚軟部組織感染症で、MRSA感染症が疑われる場合は、ただちに抗MRSA薬の投与を行う。

MRSA感染症の治療ガイドライン 日本感染症学会

小児の場合

 

しかし問題になるのは小児の場合である。8歳未満ではミノマイシンは使えない。

そのためダラシンが選択肢に入ってくる。

他にもファロムが有効な場合があるという。

CLDMは米国と比べ抗菌活性が劣ることがある。むしろわが国ではCLDMよりFRPMがCA-MRSAに有効なことが多い。

MRSA感染症の治療ガイドライン 日本感染症学会

 

ということで小児ではファロムを使用することも推奨されている。

しかしデータを見てみるとダラシンとファロムはそこまで変わらない気もする。

また「MRSAにはホスミシンを使え」と昔教えられたこともあるが、感受性はそこそこ。

 

CA-MRSAに対する抗菌薬感受性(日本)

ホスホマイシン(ホスミシン)42.1%
クリンダマイシン(ダラシン)57.9%
ファロペネム(ファロム)68.4%
ミノサイクリン(ミノマイシン)100%

(日小皮会誌 28(2) 165-168, 2009.)

 

ダラシンは小児用剤型がないのが問題。一方ファロム、ホスミシンは腸管吸収率があまりよくないそうなので効果が低いかもしれない。

あとは保険適応外のバクタを使うか、点滴で抗MRSA薬を投与するか。

小児での抗菌薬の選択は非常に悩むところである。

 

本当に抗菌薬が必要か?

 

もうひとつ大事なことは、培養で検出されたMRSAが本当に感染源なのかということ。

皮膚表面には表皮ブドウ球菌をはじめとする種々の細菌が常在している。さらにびらんや潰瘍があれば、ほとんどの症例で細菌が培養される。

 

感染であれば抗菌薬投与が必要であるが、定着(critical colonization)であれば抗菌薬の全身投与は必要ない。

褥瘡や皮膚潰瘍からもMRSAが分離されるが、critical colonizationのことが多い。

MRSAが定着している場合は、抗菌薬の全身投与は行わない。

MRSA感染症の治療ガイドライン 日本感染症学会

 

細菌が分離された場合、それが感染か定着かを鑑別することが大切である。

 

まとめ

 

今後増加してくると思われる皮膚のMRSAについてまとめてみた。

特にCA-MRSAの概念は大切である。

次回は今回の知識を基に、MRSAが増えつつある膿痂疹・皮下膿瘍のガイドラインを紹介する。

外用抗菌薬についても扱う予定。

 

つづく

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