「夢と狂気の王国」はジブリの制作現場を取材したドキュメンタリー映画。
ちょうど「風立ちぬ」と「かぐや姫の物語」を制作していたときに当たる。
いままでもジブリのドキュメンタリーはたくさん出ているが、この映画の決定的な違いは高畑勲の存在にあると思う。(実際にはほとんど出てこないんだけど)
「夢と狂気の王国」の感想
「夢と狂気の王国」の主人公は3人。
それぞれの人物について紹介する。
第1の男・宮崎駿、第2の男・鈴木敏夫
主に出てくるのは宮崎駿と鈴木敏夫。
堅いイメージのある宮崎駿だが、実は相当おしゃべりな人間である。
絵を描きながらも、じゃべりまくる宮崎駿。
ウンチクがすごくて「雑学の大家」と呼ばれている。その知識量が映画にいかんなく発揮されている。
プロデューサー鈴木敏夫の記者会見や会議のシーンもたくさんあって、映画のヒットのために暗躍する姿が描かれている。

映画のクライマックスは、主人公の声優に「エヴァの庵野監督」の起用が決定する場面。
テンションが上がる宮崎と、ドン引きする周りのスタッフの温度差がウケる。
第3の男・高畑勲
でもこの映画の本当の主人公は高畑勲な気がする。
高畑勲
スタジオジブリの映画監督。永年に渡ってともに作品を作ってきた宮崎駿の先輩で、演出面でも宮崎に大きな影響を与えた。
緻密な構成力を有し、アニメーションでありながら、リアルで自然な説得力のある世界観を追求している。
みんなが高畑のことを話題にする。「高畑が宮崎駿を見出し、作曲家久石譲を見出すことによってジブリの礎を築いた」と。
しかし肝心の高畑自身はまったく出てこない。
「桐島、部活やめるってよ」みたいに、本人ではなくて周りの人たちを描くことで高畑勲という人間像を把握するという構図になっている(そういう意図があったのかはわからないが)。
「桐島、部活やめるってよ」のあらすじ
男子バレーボール部のキャプテン桐島が部活をやめることをきっかけに、同級生5人の日常に起こる変化を描く青春群像劇。
桐島は本編に直接登場せず、その人物像は伝聞のみで明らかにされる。
特に宮崎駿は高畑をかなり意識している。
ある時は「天才だ」と絶賛し、ある時は「性格破綻者」だと酷評する。
この2面性は歪んだ愛情表現のように思われる。
「あの人が映画をつくると現場が滅茶苦茶になる。」
「監督としては見捨てている。」
宮崎自身も結構現場を滅茶苦茶にしているが、より酷い(?)高畑がいることで何とか体面を保てている。
高畑がいるからジブリが成り立っている部分が大きいということをこの映画から感じた。
そんな高畑の作品は興行成績は『平成狸合戦ぽんぽこ』が26.5億円で、宮崎の『千と千尋の神隠し』の308億円とは桁違いの差をつけられている。
しかし一方で熱狂的なファンも多く、一般受けはしないがマニアックな作風であると言える。
▼高畑の代表作火垂るの墓も一筋縄ではいかない映画▼

次回のジブリレビューでは、そんな高畑作品を2作紹介する。

ジブリレビューのまとめ
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