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皮膚科医の読書記録2020年8月

 

8月の書評は過去最多の11冊!

今回から★評価に加えて100点満点の評価も記載してみる。

 

★★★★★90~100 年間ベスト級

★★★★☆80~89 読む価値あり

★★★☆☆60~79 読んでもムダじゃない

★★☆☆☆40~59 人を選ぶ本

★☆☆☆☆40未満 時間の無駄?

 

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「おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ」の書評

評価★★★★☆85/100

サイゼリヤ創業者による飲食店経営のノウハウ本。

こういう本は説教臭かったり、精神論っぽかったりするんだけど、この本は全然違っている。

サイゼリヤが最も重視するのは利益。売上を上げることよりも、無駄をなくして経費を下げることを最優先課題にしているそうだ。

調理は包丁不要で皿に盛るだけでいいくらいに簡略化。テーブルの拭き方までマニュアル化して、どんな人間でもできるオペレーションを作り上げている。

この合理的なスタイルには見習うべき点が多い気がする。

「職員のやりがい」みたいな精神論に持っていかないところに、とても共感できた。

 

「女と男なぜわかりあえないのか」の書評

評価★★★★☆85/100

橘玲氏の新刊。やはり安定の面白さ。

今回は進化心理学をベースにした性についての話をまとめている。

痴女は存在するのか?とか、不感症が多いのはなぜか?とか、ある種低俗なネタの数々を論文のデータをもとに真面目に解き明かしていくという、すごい内容になっている。

かつてこんなアカデミックな低俗本があっただろうか(褒め言葉)。

いつもの金融や思想ネタと違って話題が身近なので万人が楽しめそうである。

もっと扇動的なタイトルにしてもよかったと思うけど守りに入ったのかな。

 

「貧乏はお金持ち」の書評

評価★★★★☆80/100

もう一冊橘玲本。

内容は会計・ファイナンスで、こちらの方が橘玲本来のテーマと言える。

マイクロ法人の作り方を解説する実用書かと思っていたら、社会の裏側を描くような本になっていた。

格差社会は規制緩和によって誕生したように思われているが、実は違うのだという。経済規模は縮小しているのに、年功序列と終身雇用で給料を減らされない、かつ解雇もされない団塊の世代のせいで若者が割りを食っている、というのが格差社会の真実なのだ。

格差社会は厳しすぎる解雇規制によって生まれている、というのは今まで気づかなかった視点である。既得権益を守ろうとする団塊の世代によって、格差社会は守られてきた。

それならば法人になってしまうのがよいのでは…というのが橘玲氏の主張である。中小零細企業の経営は厳しいと思われているが、実はそれも違うのだという。

会計の詳しい話は難しい部分もあるが、思わぬ社会の裏側が知れて興味深い内容だった。

 

「働き方5.0」の書評

評価★★★☆☆75/100

落合陽一氏が2016年に出版した「これからの世界をつくる仲間たちへ」のリメイク本。

内容は同時期に出版された「超AI時代の生存戦略」と「日本再興戦略」とほぼかぶっている。そのためこれら2冊を初めて読んだときのような衝撃はない。

でもリメイクだけあって一番読みやすいように思う。

特にこれからの機械の位置づけについてはわかりやすく書かれている。

工場の機械化とかをみると、機械に置き換わってしまうのはブルーカラーの労働のように思うが、実際は違うのだという。

コンピューターは意外にも細かい単純作業が苦手なので、ブルーカラーの労働は人間が行って方がコスパが良い。

機械に代替されるのはブルーカラーに指示を出すホワイトカラーの方である。すでにUberなどではコンピューターの指示通りに人間が動き、システムの末端に人間が組み込まれている。

これからのホワイトカラーの働き方を考える上で有用な本だと思う。

 

「世界一楽しい決算書の読み方」の書評

評価★★★☆☆75/100

「貧乏はお金持ち」と同様に会計を扱っているが、コンセプトが違っている。

こちらは会計の勉強というよりは、決算書から起業のビジネスモデルを読み解く本である。

決算書を見ればドトールとコメダのビジネスモデルが根本的に異なっていることが分かる。

題名通りこの本は楽しい。

ボリュームが少ない気もするが、ビジネスに興味がある人にとっては、会計とビジネスが同時に学べるお得な内容になっている。

 

「女帝小池百合子」の書評

評価★★★☆☆75/100

小池百合子の人生を追ったノンフィクションということだが、かなり悪意を持って書かれている。

あらゆる資料を集めて発言の矛盾点を探し出し、アンチのネガティブな意見をまとめ上げて、彼女がいかにひどい人間であるのかをアピールするような内容になっている。

筆者の女の執念みたいなものを感じさせられる。

小池百合子が実務能力ではなくパフォーマンスで今の地位を築いたのは事実だとしても、それと直接関係ない家庭環境や子供時代のことまで根掘り葉掘り書かれているのには嫌悪感を持った。

しかし小池百合子という政治家をベースに日本の政治史を学ぶテキストとしては、とても面白い。ここ数十年の日本の政治史の一大事件の中に彼女はいたのである。

また我々一般人は、実務能力なしでここまで登りつめた数々のスキルにも注目すべきだろう。ハッタリとパフォーマンス、ジジ殺しのスキルは日本最高峰といってもよいのではないか。

ただ彼女の錯覚資産のメッキが剥がれてきていることは事実である。上を目指す限りピーターの法則からは逃れられないのだろう。

 

「新魔法のコンパス」の書評

評価★★★☆☆70/100

キングコング西野が書いたビジネス本。

彼が現在取り組んでいるのは絵本の制作である。その過程で得られた広告戦略などのビジネスのノウハウが綴られている。

30分くらいで読み終わってしまうくらいボリュームがない本ではあるが、新時代のビジネスモデルを感じさせられる。

彼の創作物には莫大な広告費がかかっており、ほとんど利益は出ていないそうだ。

それがなぜ可能なのかというと、彼にはオンラインサロンという収入源があるからである。

ホリエモンの有料メルマガと一緒で、ほとんどコストゼロで数億円の利益を得ることができる。

そのお金を創作に流用することで利益度外視の作品を作ることができる。これは創作でお金を稼いでいる人に比べて圧倒的に有利になるだろう。

さらに作品が売れることで、オンラインサロンの会員が増え、制作と広告に使えるお金が増えるという好循環を生み出している。

クリエイターなら作品の質だけで勝負しろ、という声もあるだろうけど、これがこれからのクリエイターの姿なのかもしれない。

 

「メモの魔力」の書評

評価★★★☆☆65/100

手帳術の本かと思ったら違っていた。

メモは単なるツールにすぎなくて、どちらかというと思考術の本である。

筆者はあらゆることをメモして、ビジネスに応用できるような法則を抽出する作業を日々行っているのだという。これはアイデアをたくさん出す仕事をしている人には役に立つだろう。

後半部はテーマが変わって自己分析の手法が述べられている。自分の感情をメモで言語化して掘り下げていくことで、自分を深く知ることができる。

全体的に内容はちらかっているが参考にはなった。

 

「奴隷のしつけ方」の書評

評価★★★☆☆65/100

歴史の研究家がローマ人の書籍という体裁で書いた本。

奴隷の管理法から現代のビジネスに活かせるノウハウを学ぼうという趣旨のようだ。

奴隷というと強制労働というイメージだが、ローマでは社会システムの中に組み込まれていて、家事一般を行ったり、地位財としての側面も持っていたそうだ。

主人と奴隷の関係は、資本家と労働者のメタファーでもある。

チームマネジメントに活かせそうな内容だが、もっと俯瞰して見ると、それは奴隷が奴隷を管理しているだけのように思われてしまう。

 

「なぜ堀江貴文の本はすべてがベストセラーになるのか?」の書評

評価★★★☆☆60/100

久々のホリエモン本。相変わらず内容は薄くて30分で読み終わってしまう。

でもわずかに面白いことが書いてあるから完全なゴミ本ではないのが憎いところである。

なぜホリエモンはたくさん本を出版するのか。

現在ホリエモンの有料メルマガの利益は年間1億円以上あるそうだ。本でこれと同じだけの利益を上げるには毎年100万部の大ベストセラーを出し続ける必要がある。

明らかに本はコスパが悪いのである。

ところが、ホリエモンによると紙の本には権威があるそうだ。著書が書店に並んでいれば、それがトンデモ本だったとしても権威がある人だとみなされる。

つまり出版の目的は利益を出すことなく、あくまでもセルフブランディグと宣伝効果。

本は最強のビジネスツールになるわけだ。自分も本を出版してみたくなった。

 

「無名の医療者が医学書を出版するまでの道」の書評

評価★★☆☆☆55/100

医学書を出版する方法が書かれた面白いコンセプトの本。

この先生は自分で出版社に原稿を持ち込んで、医学書の出版に至ったそうだ。

医学書にもマンガみたいな持ち込み制度があることを初めて知った。

万人にはウケないと思うけど興味深い本だった。

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