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AIに代替されないための医師の働き方を考える(後編)手数を増やす

 

前回の続き。

AIに代替されないための医師の働き方を考える(前編)イメージを描く
最近AIの進歩によって人間の仕事が奪われることが心配されている。 医者も例外ではない。 AI時代に医者はどんなプロを目指せばよいか。 参考になりそうなのが、コンピューター研究者の落合陽一氏。 【関連】...

 

最近AIの進歩によって人間の仕事が奪われることが心配されている。

医者も例外ではない。

【関連】落合陽一から皮膚科医が学んだこと

 

AI時代に医者はどんなプロを目指せばよいか。

これには2つの方法があると思う。

  • イメージを描く
  • 手数を増やす

 

今回は手数を増やすことについて。

 

肝炎治療薬の話

 

以前テラビックというC型肝炎の治療薬があった。

薬疹の発症率が8割近いという、とんでもない薬である。

その時期はたくさんの薬疹患者が皮膚科を受診した。

 

薬疹を起こしたときは「薬剤を中止する」のが基本である。

しかしテラビックは12週だけ内服を完遂させればよいので、「薬を継続しながらの治療」が求められる場面があった。

そんなときは、重症化に注意しながら、薬剤を継続したままプレドニンで治療を行った。

 

そのとき思ったのは、薬剤を中止するだけなら誰でもできるが、薬剤を継続しながら治療するというのはプロにしかできない技だということ。

そこに皮膚疾患のプロとしての存在意義があると感じた。

 

このように様々なシチュエーションを経験して、多くの治療の引き出しを持っておくことがAIに代替されないために大事な気がする。

 

岩田健太郎先生の著書「コンサルテーション・スキル」にも同じようなことが書かれている。

プロとアマの一番の違いは手数の差。

第一選択を出すことは研修医でもできるが、プロは第二、第三と代替案を出すことができるのである。

プロとアマの違いに「手数」の差があります。ある感染症の「第一選択」を出すことは研修医でもできるでしょう。

しかし様々な理由から「理想的」な治療が提供でないときに、第二、第三の手と次々に代替案をひねり出せるのが、本当のプロです。

 

例えば「診断⇒治療」までの流れだけならAIが代替することは可能なはずだ。

診断のためのAIの開発は進んでいて、最適な治療もコンピューターが提示することができる。

 

しかし最適な治療が選択できない場合も多い。

色々忖度しながら70~80点の治療を行うのは人間にしかできないことだ。

 

糖尿病内科のベテランの話

 

medtoolz先生のブログ(>>臨床で必要なことはすべてmedtoolz先生から学んだにも同じような話があった。

超高齢患者の糖尿病の治療について、専門医にコンサルトしたときの話。

若い先生は理想の治療の選択肢しか持っていなくて、処方を全部変えてしまうことがあったそうだ。

うちの施設は内分泌内科の先生がたに、大学から来ていただいている。

若い人は要求が厳しい。お願いした患者さんは97歳だけど、適当にやっているのがばれて、処方を全部変えられたりする。

 

一方ベテランの先生は今の治療を少しだけ変えて、おおむね正しい方法に直してくれるのだという。

主治医のやりかたを引き継いでくれるから、病棟も混乱しないし、メンツも保たれる。

ベテランの先生がたは、そのへん優しい。自分が作った適当な治療スケジュール見ても、「いいんじゃないですか?」なんて、それにちょっとだけ専門知を付け加えて、正しいやりかたに直してくれる。

自分のやりかたを引き継いでくださるから、病棟も混乱しないし、自分のメンツも潰さないでくれる。

 

理想の治療だけではなくて、「間違ったやりかたを正解にもっていく方法」をたくさん知っていることもプロの能力と言えるだろう。

 

このように手数を増やしていくことが、AIに代替されたないために大切になるのではないだろうか。

 

まとめ

 

戦術(治療法)レベルではAIが強い。しかし戦略レベルではまだ人間の出番がある。

  • 手数を増やす
  • イメージを描く

 

これらを意識して学ぶことによって、もう少し価値を保つことができるのではないか。

そう考えて日々の診療を行っている。

 

▼medtoolz先生についてのまとめはこちら▼

臨床で必要なことはすべてmedtoolz先生から学んだ
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