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銀英伝から学ぶ軍事の話【解説・銀河英雄伝説③】

 

前回は銀英伝から政治についての内容を紹介した。

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今回は軍事の話。

銀英伝では、戦略と戦術を明確に区別することの重要性が語られている。

勝敗などというものは、戦場の外で決まるものです。

戦術は所詮、戦略の完成を技術的に補佐するものでしかありません。

(外伝「新たなる戦いの序曲」より)

 

戦術とは個々の戦闘能力。

一方の戦略とは戦闘に突入する前の政治や駆け引き。

戦略は戦術に勝る。

どれだけ個々の戦闘能力が高くても、勝敗は戦場の外の駆け引きで決まってしまう。

戦略を無視して戦術だけの優劣を論ずるなど、実際の戦争ではあり得ないことだ。

(第19話より)

 

これは軍事だけに限った話ではない。

今回は「戦略と戦術」に関わるエピソードを解説したい。

 

宇宙暦798年ラグナロック作戦(バーミリオン会戦)

 

戦いの背景と動向

戦略と戦術について、一番わかりやすく描かれているのがラグナロック作戦である。

自由惑星同盟はアムリッツァ会戦で戦力のほとんどを失ったが、要所のイゼルローン要塞を抑えているため、帝国からの侵攻は防げていた。

そこで帝国軍は禁断の作戦を実行する。

中立地帯のフェザーン回廊から全面攻勢をかけたのである。

ラグナロック作戦の図

 

同盟内で唯一、戦力的に期待できるのはイゼルローン要塞。

圧倒的火力を誇るこの要塞の戦力であれば、目の前の戦闘では勝利できるだろう。

しかし「唯一の交通路」というイゼルローン要塞の戦略的優位性は失われてしまった。

 

戦略は戦術に勝る。

その原則に則るヤンはイゼルローン要塞を放棄することを決定する。

 

しかし戦術で形勢を逆転できる可能性が一つだけあった。

それはラインハルトとの一対一の艦隊戦に持ち込み勝利すること。

後継ぎが不在の銀河帝国は、ラインハルトを失えば瓦解するのである。

 

ヤンとラインハルトの最終決戦

ゲリラ戦で帝国艦隊を各個撃破し、ラインハルトの本隊を引きずり出して倒す。それがヤンの作戦だった。

 

神出鬼没のヤン艦隊に翻弄される帝国軍。ラインハルト艦隊は次々に撃破されてしまう。

帝国軍の中では、ヤンを無視して首都を制圧すべきという声が上がる。

 

しかしラインハルトはヤンとの完全決着を望んだ。

神出鬼没のヤン艦隊を確実に倒すには、ラインハルト自身が囮になって、ヤンをおびき出すしかない。

バーミリオン会戦の図

そしてバーミリオン星域で、二人の最終決戦が始まったのであった。

銀英伝で一番熱い戦いがバーミリオン会戦である。

 

戦術で戦略的不利を逆転できるか?

 

ラインハルトの機動的縦深防御によって苦戦を強いられる同盟軍。

だが激しい戦いの末、ヤンの勝利が目前に迫る。

バーミリオン会戦の解説

 

しかしその瞬間、同盟政府からの停戦命令が発動される。

首都を包囲された政府が自分たちの身を守るため、勝利を目前にしてあっさりと降伏してしまったのである。

帝国軍の戦略的勝利。

 

ヤンは目先の戦闘では戦術的勝利を重ねたにもかかわらず、自由惑星同盟は敗北してしまったのだった。

天才ヤンをもってしても、やはり戦術で戦略を挽回することはできなかった。

ローエングラム公のすごいところは、その戦略において常に五分以上に持ち込んでしまうところにある。

彼はいつも実際に戦う前に勝利しているんだ。

 

戦略の重要性について、最もわかりやすく描かれたエピソードがバーミリオン会戦である。

 

まとめ

 

今回は銀英伝から戦略と戦術についてのエピソードを解説した。

そしてこれは軍事だけに限った話ではない。

最適な治療(戦術的勝利)を繰り返していても、患者の最適なアウトカム(戦略的勝利)が得られないことは多い。

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戦術と戦略の違いを常に意識しておく必要があるのである。

銀英伝から得られる教訓は多い。

 

次回は登場人物についての考察をする予定である。

銀河の歴史がまた1ページ・・。

つづく

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