良い紹介と悪い紹介から、紹介状の書き方を考える

この記事が気に入ったらシェア

開業医からの紹介患者を診ることが市中病院の医師の仕事である。

クリニックからたくさんの紹介を受けてきたので、どんな患者が紹介されてくるのかを考えてみると主に3つに分けられる。

  1. 診断がつかない
  2. 診断は分かっているがクリニックでは治療できない
  3. 面倒な患者なので診たくない

今回は紹介状の書き方について考えた。

スポンサーリンク

紹介状の3つのパターン

1. 診断がつかない

クリニックでできる検査は簡単な血液検査くらいだから、確定診断のために皮膚生検が必要な疾患などは紹介せざるをえない。

こういう場合は早めに紹介するのが患者のためにもよいと思うし、トラブルになるケースは少ないと思う。

2. 診断は分かっているがクリニックでは治療ができない

重症の帯状疱疹、薬疹、手術が必要な熱傷など。

このパターンで困るのは、クリニックの先生が勝手に治療方針を決めて紹介してくる場合である。

「入院が必要」と説明されて、入院準備万端で受診してくる患者がいる。

実際は入院の必要性がない場合も多くて、患者や家族と揉める原因になる。

前に皮膚腫瘍を「生検はせずに全切除」という方針を決めた上で紹介されてきた患者がいた。

悪性か良性かを生検で判断した上で手術法を決めるのがセオリーだと説明するが、患者は納得しない。生検の必要性を納得してもらうのに非常に苦労した。

患者には「紹介先の医師が治療方針を決める」と説明して紹介して欲しい。

こういうのは悪い紹介なので慎んでほしいし、自分も気を付けようと思う。

3. 面倒な患者なので診たくない

とても軽症の患者が紹介されてきて「何でだろう」と思うとこういうパターンだったりする。

こんな紹介も実は多くて困っているが、これが開業医の力の見せ所ではないかと思っている。

トラブルになりそうな患者をいち早く見抜き病院に押し付けてしまうのは、経営術としては賢いんじゃないか。

患者との関係がこじれてしまってから紹介すると明らかに厄介払いした感が出てしまうし、クリニックの評判は落ちる。

少しでもリスクがあると病院に紹介するというのが最近の傾向だという。トラブルの後始末ばかりさせてられているという不満もある。

少しでもリスクがあると病院に紹介するというのが最近の傾向です。

病院勤務医のもとには、医師の説明不足で不満のある患者さんや「診断が間違っているのでは」、「治らない」といった患者さんが流れてきます。

外来で時間を使って説明しても収益にならず、トラブルの後始末ばかりさせてられているという不満もあります。

その一方、合併症もトラブルもない患者さんだけを診ている開業皮膚科医の先生が収益を上げるという構造になっています。

(皮膚病診療: 30(3); 331, 2008)

しかし時々このパターンの紹介がとてもうまい先生がいる。

紹介状には「どうしてもなおせなくてこまっています。どうかおねがいします。」みたいに書いてあって、馬鹿のふりをしているが多分確信犯である。

そう言われてしまったら、こちらとしてはどうしようもない。

押し付けられて腹が立つ一方、その患者を見抜く目に感心もする。

開業医の能力は「うまく紹介する力」

病院の近くに評判の良いクリニックがある。

しかしその実態は「すぐに紹介状を書くクリニック」。

時間内でも時間外でも病院に患者を紹介しまくっている。

でもそれによってクリニックはトラブルを避けることができているし、「中核病院と連携が取れている良いクリニック」という評判にもつながっているようだ。

開業するならば「うまく患者を紹介する能力」も大事なんだと感じる。

トラブルになりそうな患者を病院にうまく紹介してくる先生方。

その能力は真面目にエビデンスを勉強しても身につかない。

medtoolz先生はそれを「狸であることを極める」と表現している。

いい紹介状というのは、たとえば入院を意図して書いた紹介状を持った患者さんの入院率みたいなもの。

エビデンスに基づいて知力を全開にした主治医の紹介状は、案外専門科には通らない。勉強なんてそっちのけの狸親父っぽい誰かの紹介状は貫通力が恐ろしく高かったりもする。

「狸であること」を極めることも主治医の能力パラメーターであって、力でごり押す方向で勉強を積むことは、ちょっと違うんだろうと思う。

ということで大変な紹介患者を診るのも勉強だと思って診療している。

それは病院にとっては悪い紹介だが、クリニックを守るためには良い紹介になるはずである。

スポンサーリンク

この記事が気に入ったらシェア

ブログ更新情報はこちらから

ブログランキング

▼ブログランキング▼

にほんブログ村 病気ブログ 医者・医師へ