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【トリック図解!】ミステリーネタバレ感想「首無の如き祟るもの」三津田信三

 

おすすめミステリーベスト10を以前まとめたが、それらのミステリーのネタバレ感想を書いていきたいと思う。

今回はベスト1に輝いた「首無の如き祟るもの」。

ホラーとミステリーの融合を掲げる三津田信三の最高傑作である。

 

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舞台は奥多摩の山村、媛首村。

淡首様に祟られた秘守家で起こる2つの怪事件から構成されている。

 

秘守家の子供が十三歳のときに行う「十三夜参り」で起こった殺人事件。

秘守家の花嫁を三人の候補から選ぶ「婚舎の集い」で起こった殺人事件。

 

“十三夜参り”

秘守家の跡取り長寿郎と双子の妹妃女子が、栄螺塔で儀式を行う最中に怪事件が起こる。

密室の栄螺塔の中から妃女子が消え、外の井戸の中で死体として発見された。

十三夜参りの解説の図

 

“婚舎の集い”

花嫁候補の毬子が、婚舎内で全裸の首無し死体となって発見。

さらに婚舎内にいたはずの長寿郎が消え、外の祠内で全裸の首無し死体として発見された。

毬子の友人の作家・蘭子が疑われたが2人を殺すことは物理的に不可能。

婚舎の集いの解説の図

 

2つとも不可能犯罪であり多くの謎がある。

 

  • 妃女子が密室から消えた理由は?
  • 長寿郎と毬子の首が切られた理由は?
  • 長寿郎と毬子はなぜ全裸にされたのか?

 

しかし「一つの真実」によってすべての謎が解けるところがこの小説の大きな魅力。

そのトリックを図で解説する。

 

以下ネタバレ注意

▼ネタバレなしの感想▼

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「首無の如き祟るもの」ネタバレ解説

 

死体の首が切断されたのは「被害者と加害者が入れ替わる」ため。

しかし男性と女性では入れ替わりは不可能。

ここに「男女誤認」のトリックが加わることで、それが可能になった。

 

淡首様の呪いを避けるために双子の長寿郎と妃女子は男女を入れ替えて育てられた。

首無の如き祟るもののトリックの図

この前提があれば様々な謎がすべて解けてしまう。

 

一見無茶な入れ替えだが、呪いをめぐる舞台設定のお蔭で無理なく受け入れられる。

2つの事件のトリックを図で解説する。

 

1. 十三夜参り

 

殺されたのは妃女子ではなく、妃女子のふりをしていた長寿郎だった。

殺したのは従兄弟の紘弐。

十三夜参りのトリック解説

しかし跡取りが死んでしまってはまずいため、一家総出で隠蔽しようとした。

そこで妃女子が一人二役を演じ、長寿郎ではなく妃女子が死んだという事実を作ったのである。

妃女子は妃女子として栄螺塔に入り、長寿郎として出てきたので妃女子が消えたように見えた。

この入れ替えが次の事件の謎を解くうえで重要になってくる。

 

2. 婚舎の集い

 

殺されたのは毬子ではなく長寿郎だった。

殺したのは毬子。

長寿郎は実は妃女子(女性)なので、毬子は自分が殺されたようにに偽装することが可能。

婚舎の集いのトリックの解説

 

次に殺されたのは蘭子。蘭子は女性のペンネームを使用している男性であり、長寿郎に偽装させることが可能。

蘭子が男性であることは周りには知られていない。

首無の如き祟るもののトリック解説

毬子は長寿郎、蘭子と2回入れ替わり、蘭子を演じることで婚舎から脱出した。

 

このトリックは衝撃である。

首なし死体で真っ先に思い浮かぶのは加害者被害者の入れ替わりである。

しかし男女で入れ替わりは不可能なはず。

そこで男女の入れ替わりを3回行うことによって成立させた。

これによって、すべての怪奇現象が論理的に説明できるというすごい構成ができあがったのだ。

 

3. おまけトリック

 

男女の誤認と加害者被害者の入れ替わりトリックだけでも十分満足なのだが、さらにもう一つ大きなトリックがある。

犯人の毬子が今どこにいるのかという謎。

 

この小説は作中作の形をとっており、冒頭に「作者は犯人ではありません」と注意書きがある。

しかし小説の作者が犯人の毬子自身であったという事実。

実は作者が途中で入れ替わっており、作者が犯人でも問題ないという理屈である。

 

正直ここまでくると消化不良になってしまう感もあるが、サービス精神が旺盛すぎる作者に感服。

自分のベスト1に値する傑作である。

 

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