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市販の水虫薬はやめよう OTCに侵食される皮膚科の未来

 

水虫(足白癬)の患者の半数は薬局で市販薬(OTC医薬品)を購入しているという。

病院を受診する人はわずか2割程度らしい。

(日本医師会雑誌. 146(3)517, 2017)

OTC医薬品とは

これまで医師の処方箋がなければ使用できなかった医薬品を、処方箋なしに薬局などで購入できるよう、一般用医薬品として認可したもの

軽い病気や症状は市販薬で治してもらうことで、膨張する医療費を抑制するのが狙い

 

今回はOTCの効果と皮膚医療に与える影響について考えてみた。

 

OTC水虫薬の注意点

 

OTCの水虫薬の効果が低いかというと、そんなことはない。

抗菌成分は病院で処方される水虫薬と一緒。つまり市販の薬でも水虫の治療は可能だ。

 

しかしOTCの水虫薬には注意点がある。

 

OTC水虫薬の注意点

  1. 診断が間違っているかもしれない
  2. 副作用を起こしやすい
  3. 正しい塗り方ができているか

 

1. 診断が間違っているかもしれない

 

「みずむし」を主訴として受診した患者の13~33%が、足白癬ではなかったという報告がある。

(皮膚真菌症診断・治療ガイドラインより)

 

足白癬と見分けが付きにくい疾患はいくつもある。

白癬以外の疾患に自己判断で水虫薬を塗り続けていると、治らないだけでなく悪化してしまう可能性も高い。

 

2. 副作用を起こしやすい

 

また市販薬は処方薬よりも副作用を起こしやすい。

市販薬には抗真菌薬だけでなく止痒目的で「クロタミトン」、殺菌目的で「イソプロピルメチルフェノール」などが配合されている。

これらは「かぶれ」の原因になることが知られている。

 

3. 正しい塗り方ができているか

 

抗真菌薬を外用すると症状は治まるが、白癬菌は残存している。

また症状がない部分にも白癬菌がいるため、足全体に最低1か月以上は外用を継続しないと治癒しない。

症状の有無にかかわらず趾間から足底全体に外用抗真菌薬を塗り残しなく、最低1か月は塗り続けなければならない。

皮膚真菌症診断・治療ガイドライン

 

OTCを購入した患者がそこまで徹底した外用ができているかどうかに疑問が残る。

これらの理由から「水虫になったら皮膚科を受診するように啓蒙すべし」とされている。

これには一理あるが海外では状況が違うようだ。

 

海外の現状と厚労省の野望

 

韓国ではすでに湿疹、水虫、にきびの薬がOTCにスイッチしているという。

つまり基本的に皮膚科を受診する必要がない。

外用薬を処方しているだけの皮膚科は経営が破綻し、韓国の開業皮膚科医は美容と皮膚外科に移行したらしい。

(皮膚病診療30(3):331, 2008)

 

日本でも医療費の抑制のため、OTCへの切り替えが密かに進んでいて、2017年1月からセルフメディケーション税制が新設された。

セルフメディケーション税制とは 

OTC医薬品の購入費用について所得控除を受けることができる(税金が安くなる)制度

 

これはOTCの推進のための制度で、軽症医療の保険外しを進めるための受け皿作りと捉えられる。

OTCはやめようなんて啓蒙していても、時代の流れには逆らえない。

医療費の増大は続いており、国は医療費抑制の方向に大きくかじを切らざるを得ません。

軽症の疾患は健康保険制度を利用せずセルフメディケーションを中心に医療を展開し、人的・経済的リソースを重症疾患に割く体制が進むと考えています。

医療4.0 (第4次産業革命時代の医療)

 

さらに自己検査も可能になるかもしれない。

「水虫になったら皮膚科を受診するように啓蒙すべし」から「水虫になったら皮膚科へは行かずに薬局で薬を買うべし」という時代に変わっていく可能性も高い。

 

そうなると、これからの皮膚科は、韓国と同様に普通の診療だけではやっていけなくなるだろう。

「診察をして軟膏を処方する」ことが医療行為と認められなくなった時に、皮膚科医はどうすればよいのか。

やはり美容に進むしかないのだろうか。

今後クリニックを開業するなら、考えておかなければならない問題である。

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