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「魔女の宅急便」の3つのテーマ ジブリレビュー③

 

今回のジブリレビューは「魔女の宅急便」。

この作品は「思春期の女の子の話」なのだが、同時にまったく別のテーマも設定されている。

それを知ることで、ただの子供向けアニメではない、この作品の奥深さを理解できるようになるだろう。

今回も解説本「ジブリの教科書」からテーマを読み解いていきたい。

 

▼前回の記事▼

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魔女の宅急便のテーマ

 

働く女性の話

ジブリの教科書によると、この映画は思春期の女の子を描くのと同時に「田舎から都会に出てきて働く女性たち」を描いているのだという。

都会で一人暮らしをするキキの色々な苦労は、現代社会で女性が遭遇するであろう物語。

仕事のサクセスストーリーではなくて、「仕事の大変さ」をリアルに描きたかった。

 

有名なのはニシンのパイのシーンである。

せっかく届けたパイを「いらない」と言われショックを受けるキキ。

ニシンのパイを届けるキキ

 

宮崎駿は「物を運んで幸せをもたらす」みたいな成功物語にならないように気を付けたと語っている。

人から人へ物を運ぶことによって、自分が他人に幸せをもたらすとか、そういう甘ちゃんなことはいっさいやめようと。

冷たい反応があったり、好意の反応があるかと思ったらなかったり。

とにかく成功物語にしては絶対にいけないと、それは初めから気をつけていたことです。

 

このように魔女の宅急便には「思春期の女の子」と「田舎から都会に出てきて働く女性」の2つのテーマが込められている。

それだけではなく、さらに3つ目のテーマも存在するのが、この作品の深さである。

 

天才を描く話

3つ目のテーマは「才能」。

宮崎駿はこの作品で「魔法=才能」と考えた。

この映画の中の魔法を、いわゆる魔法ものの伝統から切り離して、彼女の持っているある種の才能というふうに限定して考えました。

 

魔女の宅急便は、生まれつきの才能を持った人間を描く映画でもある。

天才には、天才にしかわからない苦悩がある。

そのモチーフになったのは、当然天才・宮崎駿。

 

天才は凡人ができないことを軽々とやってのけることができる。

しかしその才能を仕事にしようとしたとき、急にできなくなってしまったのだという。

高校ぐらいの時は漫画が好きで、いくらでも描けてましたでしょ。どんどん描ける。

ところが、これを商売にしたとたんに描けなくなる。いくらでも湧くようにできていたことが、意識的に描こうとすると湧いてこないんです。

 

才能は習得したものではなく、無意識でやっていたことなので、どうしていいかわからない。

そこで意識的に力を自分のものにする過程が必要なのだ。

自分で習得したものではないですよね。才能っていうのはみんなそうなんです。

無意識のうちに平気でやっていられる時期から、意識的にその力を自分のものにする過程が必要なんですよ。

 

「飛ぶ才能で仕事を始めて、急に飛べなくなってしまう」キキには、「絵を描く才能で仕事を始めて、急に描けなくなってしまった」宮崎駿自身の苦悩が反映されているのである。

 

原作者からの批判

 

魔女の宅急便には原作の児童書がある。

原作は色々な不思議な依頼を知恵をしぼって解決していくという話だが、映画はもっと現実的な話に大幅に改編されている。

原作には、いかにも知恵を絞ってクリアしていったら気持ちのよさそうな課題が出てくるんだけど、実際はそうじゃないでしょ。

映画ではジャガイモの箱を運ぶシーンがあるんですが、持っていったらそれでオシマイです。

 

この改変に原作者が不満を感じたのだという。

これは映画の世界ではよく聞く話である。

 

スタンリーキューブリックの名作「時計仕掛けのオレンジ」や「シャイニング」も改変しすぎて原作者から嫌われている。

 

原作者に嫌われるくらい物語を変えてしまうのが、名監督の条件なのかもしれない。

原作を忠実に再現しようとした映画は原作を超えられないことがほとんどで、名作になったという話は聞かない。

 

まとめ

 

「魔女の宅急便」は一見女の子の成長物語である。

しかし宮崎駿は原作に様々なテーマを追加して重層的な作品に仕上げた。

 

後に原作に忠実な実写映画が製作されたが、評判はイマイチだったようだ。

シャイニングも原作に忠実な映画が製作されているが、やはりキューブリック版を超えることはできなかった。

原作改変や原作者からの批判も含めて、この映画が名作であることを疑う余地はないだろう。

 

次回のジブリレビューは「耳をすませば」。

つづく

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